あたらしい山 [photograph]
2015
冬の間、雪国では『降り積もった雪を一箇所に集積』させた雪捨て場が街の至る所に姿をあらわします。
この光景は雪国で生活をする人にとっては当たり前であり、特に気にとめるものではありません。
むしろ厳しい冬の生活を象徴するネガティヴなものとして存在しています。
しかし、見慣れない光景としてその存在を見ている私には、街中に点在する日々形を変え続ける雪の山々はネガティヴであるどころか魅力的に映ります。
私が見ているものと、雪国で生活をする人々が見ているものは、同じであるにも関わらず、経験によって捉え方/価値が全く異なっていると言えます。
今作では、雪捨て場の一つである『マックスバリュ|山形青田店』の駐車場を撮影の対象にして、反転や対立の要素を内包させながら、経験に左右されない
”あたらしい山”のイメージをつくり出しています。
[掲載]
[展示]
2015/TAPギャラリー
“あたらしい山”が内包する反転や対立の要素について
・作品制作の舞台は、山形市にある“スーパーマーケット/マックスバリュ”の駐車場にある雪捨て場です。
最大の価値を示唆する“マックスバリュ”で、価値のないものとして存在する雪捨て場の(雪)を撮影しています。
・雪捨て場というのは、雪国で生活をする人にとっては厳しい冬を象徴するネガティブな存在ですが、私はそこに
美しさというポジティブな要素を見いだしています。
ネガティブな存在に対して感じたポジティブな要素を表出する為に、ポジティブ画像をネガティブ画像に変換し
ています。
・雪捨て場に対して自然の美を見出していますが、雪捨て場の雪というのは除雪作業という人の営みによって形
づくられています。
自然現象として降り積もった雪を、除雪することで出来た雪山はその後も天候(気温や降雪)によって日々形を
変え続けていきます。
不動如山(動かざるごと山のごとし)という言葉があるように、山というのは不動のモノであるというイメージ
がありますが、雪捨て場の雪山は“人と自然の営み”という2極を内包した状態で常に変化を続け(あたらしい)
状態を保ち続けます。
・作品の中にある5枚のシーケンスは、同じ雪捨て場で1ヶ月の間に撮影した写真の中から、山脈のような状態に
繋がって見えるカットを選び、実際には存在しない展望を作り出しています。
実際の雪捨て場にはこのようなスケール感はありませんが、フレーミングとスケールの往還という写真の特徴を
利用する事で架空の“あたらしい山”の風景を作り出しています。